その仕事、順調に進んでいますか?  作成:加藤嘉夫 (2020年9月29日更新)

ブログ-教育

「モニタリング&コントロール」
って、聞いたことありますか?

簡単に言うと、
仕事が順調に進んでいるかどうかを監視しながら、前に進めていく考え方です。

仕事に限らず、人は誰もが意識せずにやっているはずです。

例えば、
自宅から最寄り駅まで向かって、朝7:30の電車に乗る場合を考えてみます。

バス停まで3分、バスの所用時間が約5分かかるとしたら、ちょっと余裕を見て7:15頃に自宅を出れば間に合います。

でも、バス停までは予定通りでも、バスがなかなか来なかったり、
渋滞で予想外に時間が掛かったり。
いろいろなことが起こる可能性があります。

こういうことが起こっても、7:30の電車に間に合うようにするのが、
モニタリング&コントロールの考え方です。


この例だと、頭の中で考えながら行動していけば、何とかなりますよね。
でも、仕事に当てはめると、意識していないと脇道に逸れていって戻ってこれないなんてことも。

これって、プロジェクト管理や、業務計画実行時などの基本中の基本なのですが、
以外と難しいかもしれません。

いろいろとポイントがあります。
以降で易しい事例を交えながら解説していきます。

モニタリングの考え方

モニタリングとは、簡単に言うと、
仕事が順調に進んでいるかどうか、途中途中で確認することです。

最初に書いた事例(最寄り駅までバスで移動する)で言うと、
 ・予定時間(以前)に自宅を出発したか?
 ・自宅出発時の余裕時間は何分あったか?
 ・バスは、定刻に到着したか?
 ・渋滞はしていないか?
などを確認することです。

ここで大切なことは、
 「何を確認するか?」
です。

順調に進んでいるかどうかを判断できることが大切です。
当然、判断基準の定義も必要になってきます。

そして、
モニタリングする項目は、仕事を開始する前に決めておくことも大切です。
なんとなく、「上手く進んでいるかなぁ~」と確認するだけでは不安になったり、
思わぬ落とし穴に嵌ったりしてしまいます。

では、
モニタリングする項目をどうやって決めるか?

まずは、
その仕事の「目的」は何かをはっきりとさせるところからです。

事例で言うと、「7:30の電車に乗るため」というようなことです。
(実際の仕事では、なぜ7:30の電車に乗る必要があるのかということまで考えますが、説明をシンプルにするため、目的はここまでで留めておきます)

そして、7:30の電車に乗るための最終目標を具体的に決めます。
例えば、
駅に到着してバスを降車する時間を、余裕を見て7:25と設定します。
これで、最終目標が設定できました。

ここで一呼吸!

もう一つ大切なこととして、
最終目標がクリアできれば、目的も達成できたことになるかも合わせて考えてください。
 「この目標がクリアできたら目的を達成したと言えるか?」
をです。
答えがYesであれば、最終目標設定は完了です。

さらに、中間目標も設定します。
最寄りのバス停でのバスへの乗車時間を、7:18に設定する等です。

モニタリングでは、ここが大切です。

こうやって、中間目標を含めて設定しておくことで、途中途中でモニタリングができるようになります。

さらに、
モニタリング項目を設定したら、もう一つ考えておくことがあります。

それは、
モニタリング結果を見て、
  「何をしたいのか?/どうしたいのか?」
です。
これは、次の「コントロール」に繋がっていきます。

これを考えておかないと、
 「何となく、モニタリングしました」
で終わってしまいます。

如何でしょうか?
モニタリングの考え方が理解できましたか?
次は、コントロールについて説明します。

コントロールの考え方(その1) 事実に基づき違いを明らかにする

途中途中でモニタリングを行うことで、仕事が順調に進んでいないことを発見したら行うのがコントロールです。

コントロールを簡単にいうと、
仕事を「順調な状態」に戻すことです。

どうやって順調な状態に戻すかの前に考えることがあります。

 「順調な状態と、順調でない状態の違いは何か?」
 「違いの度合いはどの程度か?」
を明確にするところからです。

 「恐らく、○○が違っている」
というような曖昧な違いではなく、違いの「事実は何か?」を明確にすることが大切です。
定性的ではなく、数値を使った定量的な表現ができるように、違いを明確にします。

事例(最寄り駅までバスで移動する)で言うと、
 ・自宅出発時間は、予定時間と何分差があったか?
 ・最寄りのバス停にバスが到着した時間は定刻と何分差があるか?
 ・渋滞による時間ロスは何分程度あるか?
 ・バスが駅に到着した時間は定刻と何分差があるか?
などです。

大切なのでもう一度書きます。
 「事実は何か?」
を明確にしてください。

コントロールの考え方(その2) 順調な状態に戻す

コントロールを簡単にいうと、
仕事を「順調な状態」に戻すことでした。

では、どうやって考えていくのか?
コントロールの考え方(その1)で、
 「順調でない状態」
を事実に基づき明確にしました。
この違いに着目して、「順調な状態」に戻していきます。

ここで思わぬ勘違いを起こさないようにしてください。
ちょっと考えれば気づけると思います。(言われるまでもないですよね)

そう、順調でない状態になってしまった事実は、既に「過去」なのです。

つまり、過去の順調な状態には戻れないということです。
当たり前ですよね。

では、どのように考えていくのか?
考え方は単純です。

「現在を基準に、未来の中間目標(最終目標)時点で順調な状態に戻す方法を考えて実行する」
です。

仕事の場合には、順調な状態に戻す方法は数多く考えられますが、
「制約事項」も同時に数多くあります。

どの方法を選択するのか?

ポイントは、
 「100点の解決策を求めない」
です。

「仕事には、100点のやり方はない!」
というのを覚えておいてくださいね。
実行に移し、行動を起こさなければ問題は何も解決しません。
100点の解決策を考えているうちに、時間がどんどん過ぎていってしまわないようにです。

コントロールの考え方(その3) 対策実行時にも必要

仕事を「順調な状態」に戻すことがコントロールでしたよね。

仕事を順調な状態に戻す方法を決めたら、対策を実行に移すのですが、
この対策実行中にも、モニタリング&コントロールが必要です。

数多くの制約事項があったり、
100点ではない解決策を実行することになるのですから、
ここでも、最終目標・中間目標と、上手く進んでいるかを判断するための評価基準を決めておく必要があります。

解決策を最後まで終わらせてからの判断では手遅れになる危険がありますよね。
ですから、ここでもモニタリング&コントロールが必要になるんです。

如何でしょうか?
コントロールの考え方が理解できましたか?
次は、リスクについて説明します。

リスクについて(その1) リスクを想定する

リスクを簡単に言うと、
 「目標達成を阻む要因」です。
簡単ではなかったですか?(笑)

例えば、
最寄り駅までバスで移動する例で言うと、
 ・自宅出発直前に家族から用事を頼まれて出発が遅れるリスク
 ・バスが、定刻より遅れて到着するリスク
 ・バスが超混雑していて、乗車予定のバスに乗れないリスク
 ・駅までの道が渋滞しているリスク
などです。

仕事においては、「リスクを想定」することが大切なのですが、
これが、慣れていないと難しいんです。
どうやってリスクを想定するのか?

そのやり方は、
仕事を開始してから、最終目標に到達するまでの一つひとつの作業(タスクと呼びます)を具体的に思い浮かべていくことから始めます。

それぞれのタスク毎に、
 「阻む要因は何があるか?」
を丁寧に考えて行きます。

リスクは、外的要因の方が多いです。
外的要因というのは、上に書いたリスクの事例を見ると分かると思います。

他にも、
 ・今日は○○曜日なので、他の日よりも渋滞になる可能性が高い
 ・今日は雨が降っているため、バスが混雑している可能性が高い
なども思いつきますよね。

これも、外的要因です。

外的要因以外では、自分自身の仕事の不慣れや知識不足などからくるリスクもあります。
リスクの想定は、慣れていないと難しいと書きましたが、
 「丁寧に考える」
ことを繰り返し経験し、地道に積み上げていくことでできるようになっていきます。

当然、その仕事の内容に関係する情報や知識も必要になってきます。
経験の積み重ねに合わせて、情報収集や知識も増やしていく必要があります。
これも、地道な積み重ねが大切です。

もうひとつ、
「自分で考える」
ということも大切です。
人から教えてもらうだけでは、自分でできるようにはなりません。

リスクについて(その2) 悪い影響を与えるリスクだけではない

リスクとは、「目標達成を阻む要因」でした。
ちょっと違う言い方をすると、
 「目標に対する不確実性による影響」
とも言えます。

「阻む」という言葉から思い浮かぶことは、悪影響を与えるという意味を思い浮かべます。
でも、リスクはこれだけではなく、「不確実性」ですから「良い影響」も含まれるのです。

「良い影響」の例を、最寄り駅までバスで移動するでいうと、
 ・駅までの道路がいつもより空いている
 ・途中のバス停で乗降客がいなかったので停車せず通過した
などの影響で、予定乗車時間よりも早く駅に到着した、
のようなことです。

プロジェクト管理などの業務においては、
 「プラスとなる事象(リスク)の発生確率と影響度を増加させ、
  マイナスとなる事象(リスク)の発生確率と影響度を減少させる」
を考えながら、リスクコントロールを行っていくことで、より良い結果が得られることになります。

ちょっと、難しくなってしまいましたね。

リスクについて(その3) 事前対策を実行するリスクの決め方

次に考えることは、
 「リスクを想定できたらどうするか?」
です。

まずは、悪影響を与えるリスクについてです。

悪影響を与える可能性があるわけですから、このリスクが起こらないことが一番いいですよね。
でも、起こらないことを期待するだけで何もしないのは運任せになってしまいます。

せっかくリスクを認識したのですから、起こらないように何かできることはないか考えたいですよね。
とは言っても、リスクは外部要因が多いですから、自分で起こらないようにするのは難しいです。

では、どうやって考えて行くのか?

まずは、以下のことを一つひとつのリスクについて考えてください。
 ①そのリスクが発生する可能性(発生確率)はどの程度か?
  発生の可能性、大・中・小の3~5段階程度で決める。
 ②そのリスクが発生したときの被害量はどの程度か?
  金額、時間、作業量が増える、他組織への影響、などを考えます。
  これも、とりあえず大・中・小の3~5段階程度で決める。

次に、①②を見て以下に分類します。
 a 発生しないように事前に対策を実行する必要があるリスク(発生確率を下げる)
 b 被害量を軽減する対策を事前に実行するもの(影響度を下げる)
 c リスクが実際に発生するまで何もやらない(事前対策をしない)

被害量が大きいときには、aまたはbに分類することが必要です。
cの場合には、発生したときにどのように対処するかを事前に考えておきます。

次に、abの事前対策を具体的に検討します。
そして、その対策にどの程度のコスト(時間や手間など)が掛かるのかを検討します。

最後に、上記の検討結果を総合的に判断して、事前対策を実施するリスクを決定します。
この決定に伴って、事前にリスク対策を実行しないと決めたものについては、発生したときにどのように対処するのかの方針をこの時点で決めておいてください。

事前対策を考えるのは難しいかもしれませんね。
でも、諦めずに少しでも効果のありそうな方法を考え出すことを繰り返していくことで、より効果のある策を考えられるようになっていきます。
「諦めず、地道に、粘り強く」取り組むことが大切です。

もう一つ、違う考え方も書いておきます。
リスク発生の時期を遅らせる策の実行という方法も状況によってはリスク対策になります。
「時間稼ぎ」的な考えですし、「時間が解決する」ということもあります。
「時間が解決する」というのは、外部環境が変化することで当初リスクであったことがリスクでなくなるという意味です。

リスクについて(その4) 良い影響を与えるリスク

次は、良い影響を与えるリスクについてです。

良い影響を与えるリスクは、「偶然」を期待することは構いませんが、
偶然を期待しているだけでは意味がありません。
何もやらないということは、良い影響を与えるリスクを認識できていないことと同じになってしまいます。

では、どう考えれば良いのか?

悪い影響を与えるリスク対策の一つとして、「発生確率を下げる」というのがありました。
良いリスクは、この逆を考えます。
つまり、「発生確率を上げる」策を考えて実行することです。
これであれば、偶然を期待しているだけの待ち状態とは違います。

発生確率を上げる策を考えた後、実行に移すかどうかはその策を実行する手間と発生したときの効果のバランスで決めることが必要です。

どんなことを行えば発生確率を高められるのか?
簡単な例で説明します。

例えば、
「この仕事、Aさんにちょっとだけ手伝ってもらえれば、効率良く終わる。
 でも、Aさんは忙しくて手伝える余裕がなさそうだ。」
という場合、
Aさんが勝手に「手伝おうか」と言ってくれるまで待つのは、「偶然を期待する」ことになってしまいます。

ここまで書けば分かると思います。
そう、
「Aさんが忙しそうにしている理由を調べて、Aさんの余裕時間を作るための方法を考える。
 そして、Aさんに手伝ってもらえるようにするために、考えた方法を実行に移す。」
です。
実際の仕事はこんな単純ではありませんが、考え方は同じです。

大切なことなので、もう一度書きます。
 「偶然を期待するだけでは、何も行わないのと同じ」
です。
ぜひ、良い影響を与えるリスクの発生確率を上げるということにも取り組んでみてください。

おわりに

以上で、「その仕事、順調に進んでいますか?」は終了です。
仕事の場面で必要となる基本的な考え方を書かせて頂きました。

仕事柄、プロジェクトマネジメントに関わる機会が多いのですが、今回お伝えした考え方が理解できておらず、行き当たりばったりに対応している人を数多く見てきました。
ちょっとしたコツを掴めばもっと効率的にできるのに、と思っていました。
そこで、今回書かせて頂いたように、できるだけ分かりやすい易しい事例を交えながら説明するようにしています。
記述レベルは、学生や新入社員でも理解できる表現を意識しながら書きました。
若手社員の方や、後輩を指導する立場の方などにお役に立てれば幸いです。

                著者 プロフィール

加藤嘉夫 ITコーディネータ、GCS認定プロフェッショナルコーチ
30年のシステムの開発、人財育成/教育、組織活性化、業務プロセス改善の経験によるマネージメント能力を活かして、業務の改善/推進が確実に行われる仕組みの確立とそれを推進する人材育成、組織活性化に注力。

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